ビカクシダ(コウモリラン)を育てていると、貯水葉の隙間からアリが出入りしているのを目にすることがあります。「もしかしてアリの巣になっている?」「このまま放置して大丈夫?」と不安に思う方も多いでしょう。実はビカクシダは「アリ植物」として知られる植物のひとつで、自然界ではアリと特別な関係を築いています。今回は、ビカクシダとアリの共生関係について、そして室内栽培でアリの巣ができてしまった時の対処法をご紹介します。
ビカクシダはアリ植物?自然界での不思議な関係

アリ植物とは、植物体内にアリが住める空間を提供し、アリと共生関係を築く植物のことを指します。ビカクシダも代表的なアリ植物のひとつで、原生地である東南アジアやアフリカ、オーストラリアの熱帯・亜熱帯地域では、アリとの共生が頻繁に観察されています。
ビカクシダの貯水葉は成長するにつれて重なり合い、幹に密着して盾のような形状を作ります。この貯水葉の内側には自然と空洞ができ、アリにとって理想的な巣の環境が整うのです。アリはビカクシダの貯水葉内に巣を作ることで、雨風をしのげる安全な住居を手に入れます。
一方、ビカクシダはアリの巣ができることで複数のメリットを得ています。アリが運び込む昆虫の死骸や排泄物、落ち葉などの有機物は、やがて分解されてビカクシダの栄養源となります。また、アリは他の昆虫からビカクシダを守る用心棒のような役割も果たしており、この相互扶助の関係がアリ植物としてのビカクシダの生存戦略なのです。
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室内栽培でアリの巣ができた場合の問題点
自然界ではアリ植物として理にかなった共生関係を築いているビカクシダですが、室内で栽培している場合は話が変わってきます。
まず最も注意すべき点は、アリが他の害虫を「保護」してしまうケースです。アリはアブラムシやカイガラムシが分泌する甘露を好むため、これらの害虫を外敵から守りながら飼育するような行動をとることがあります。ビカクシダにアリの巣があり、なおかつ害虫が発生している場合、害虫が増殖しやすい環境になってしまいます。
次に、室内での衛生面の問題です。アリの巣がビカクシダにできると、アリは餌を求めて室内を徘徊するようになります。キッチンや食卓に現れることもあり、生活空間としては不快に感じる方が多いでしょう。
ビカクシダにアリの巣ができた時の対処法

まずは害虫の有無を確認する
ビカクシダにアリの巣ができていることに気づいたら、まず最初に行うべきことは害虫のチェックです。アリ植物としての性質を持つビカクシダですが、アリ自体は植物の組織を食べることはありません。アリの巣があること自体はビカクシダに直接的なダメージを与えないため、慌てて駆除する必要はないのです。
しかし、アブラムシやカイガラムシといった害虫がビカクシダに寄生している場合は話が別です。ビカクシダの新芽や葉の裏側、貯水葉と胞子葉の付け根部分を丁寧に観察してください。もし害虫が見つかった場合は、アリの巣の駆除よりも先に、これらの害虫を駆除することが優先です。害虫がいなくなれば、アリも甘露という餌がなくなるため、自然とアリの巣を放棄して別の場所へ移動していくことが多いのです。
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水やり方法を工夫してアリの巣を移動させる
害虫がいない場合、ビカクシダの水やり方法を工夫することでアリに巣を移動してもらうことができます。最も効果的なのは「ソーキング」と呼ばれる方法です。ソーキングとは、ビカクシダの株全体をバケツや水槽などの水に浸ける水やり方法で、アリの巣ができているビカクシダをソーキングすると、水が貯水葉の内部まで浸入するため、アリは巣が水没する前に逃げ出します。
ソーキングは5分から15分程度、株全体が水に浸かるようにして行います。その後はしっかりと水を切り、風通しの良い場所で乾かしてください。週に一回程度の頻度で数回繰り返すことで、アリは「ここは巣に適さない」と判断し、別の場所へ移動していきます。アリ植物としての性質を持つビカクシダですが、頻繁に水没する環境はアリの巣としては不向きなのです。
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置き場所を変えてアリの侵入を防ぐ
ビカクシダからアリの巣を移動させた後は、再びアリが戻ってこないように予防策を講じることが大切です。最も効果的なのは、アリがビカクシダまで到達しにくい場所に株を移動させることです。
床や棚に直接置いている場合は、ハンギングスタイルに変更することを検討してみてください。ビカクシダを壁や天井から吊るすことで、アリの侵入経路を大幅に減らすことができます。アリ植物としてのビカクシダは樹上で生活する着生植物ですから、ハンギングは自然な姿でもあり、インテリアとしての見栄えも良くなります。
どうしても棚や台の上に置きたい場合は、水を張った受け皿の中に台を設置し、その上にビカクシダを置く方法もあります。水が「堀」の役割を果たし、アリが登ってくることを防ぎます。ただし、ビカクシダの株自体が水に直接触れないように注意してください。
アリの巣を予防する日常管理
ビカクシダにアリの巣ができるのを防ぐには、日頃からの管理が重要です。アリは食べ物や有機物が豊富な場所を好みます。枯れた葉で腐敗が始まっているものは取り除き、水やり後に受け皿に溜まった水は放置せず、定期的に捨てることが大切です。
また、有機質が多すぎる用土はアリにとって魅力的な環境となります。ビカクシダは水苔やバーク(樹皮)を中心としたシンプルな用土で十分育ちますので、清潔な資材を使用しましょう。
まとめ
ビカクシダは自然界では代表的なアリ植物であり、アリの巣を受け入れることで互いに利益を得る共生関係を築いています。しかし、室内栽培においては、アリの巣ができることで問題が生じることもあります。
大切なのは、ビカクシダにアリの巣ができたからといって過度に心配せず、適切な対処法を実践することです。まずは害虫の有無を確認し、ソーキングや置き場所の変更などの穏やかな方法から試してみてください。アリ植物としての特性を理解しながら、室内環境に適した管理を行うことで、美しいビカクシダを長く楽しむことができます。
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