ムシトリスミレの園芸種は、主に「温帯低地性」と「熱帯高山性」の2つがあり、それぞれの育て方が異なるため、ムシトリスミレを購入する前に、どちらの種類であるかを知っておく必要があります。特に、腰水などの水やり方法が種類によって異なるので注意が必要です。
ムシトリスミレの種類
ムシトリスミレの種類は約80種あると言われていて、オーストラリアと南極を除く各大陸に広く分布しています。ムシトリスミレの種類は大きく分けて「温帯高山性」「温帯低地性」「熱帯高山性」がありますが、そのうちの「温帯低地性」と「熱帯高山性」が園芸種になります。
温帯高山性のムシトリスミレは、冬芽を作って越冬するタイプです。(※南米産のいくつかの種類は冬芽を作らないものがあります。)高山植物なので日本の低地での栽培は難しいです。日本に自生しているムシトリスミレ(P.macroceras)とコウシンソウ(P.ramosa)も温帯高山性の種類ですが、天然記念物として保護されています。
園芸種として日本で流通しているのは、温帯低地性と熱帯高山性のムシトリスミレです。温帯低地性のムシトリスミレは北米産のものが多いです。熱帯高山性のムシトリスミレはメキシコ原産のものが多く、メキシカンピンギキュラと呼ばれることもあります。
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温帯低地性のムシトリスミレ
ピンギキュラ・プリムリフローラ(P.primuliflora)
ピンギキュラ・プリムリフローラ‘ローズ’(P.primuliflora‘Rose’)
P.caerulea / P.sharpii / P.lutea / P.ionantha / P.lusitanica / P.pumila / P.planifolia など
熱帯高山性のムシトリスミレ
アシナガムシトリスミレ(P.moranensis)
ヒメアシナガスミレ(P.esseriana)
P.colimensis / P.ehlersae / P.cyclosecta / P.agnata / P.acuminata / P.zecheri / P.emarginata など
ムシトリスミレの腰水や水やり方法は種類によって違う
ムシトリスミレを栽培する場合は、温帯低地性もしくは熱帯高山性のムシトリスミレになりますが、これらは自生地の環境が違うため、それぞれの栽培方法が異なります。
ピンギキュラ・プリムリフローラ(P.primuliflora)などの温帯低地性のムシトリスミレは、光を好む傾向があるので屋外で栽培するのが一般的です。ただし、真夏の強い日差しが直接当たると葉焼けする恐れがあるので、夏場は5%程度遮光します。
水苔や用土は常に湿らせておくことが重要で、一年を通して腰水で育てます。「腰水(こしみず)」とは、水を張った容器に鉢を浸して、鉢底から水を与える方法のことを言います。
ハエトリソウやモウセンゴケなど、他の食虫植物を育てた経験がある方は、温帯低地性のムシトリスミレも食虫植物の一般的な育て方なのだと理解できると思います。
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しかし、アシナガムシトリスミレ(P.moranensis)などの熱帯高山性のムシトリスミレは、このような育て方とは異なります。熱帯高山性のムシトリスミレは真夏の暑さに弱いので、屋内で栽培することが望ましいです。南向きの窓辺のレースのカーテン越しくらいの日差しが丁度良いです。
熱帯高山性のムシトリスミレは、メキシコの山岳地帯にある石灰岩の隙間や樹木の窪みなどに着生しています。基本的に他の食虫植物は酸性土壌を好みますが、ムシトリスミレは石灰岩のアルカリ性土壌でも生きていくことができます。
自生地では雨季と乾季があるので、熱帯高山性のムシトリスミレを栽培する際の水やり方法も、腰水はせずに季節によってメリハリのある水やりを行うことが大切です。
日本で栽培する場合は、春から夏にかけて生育期が訪れるので、この時期の水やりはたっぷり与え、秋から冬にかけての休眠期の水やりは、水苔や用土が乾いてから水やりをする程度で十分です。
ですから、熱帯高山性のムシトリスミレの育て方は、食虫植物よりも観葉植物の育て方に近いものがあります。
水やりをする際には、ムシトリスミレの根元部分に水を与えるようにしましょう。ムシトリスミレの上から水をかけてしまうと、葉の付け根部分に水が溜まり、そのままにしておくと腐ってしまうことがあるので注意が必要です。
ムシトリスミレ
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